Japan’s job market #2：賃上げ ― 低成長からの脱出？

📈 日本の雇用市場 #2：賃上げ ― 低成長からの脱出？

💰 長年の賃金停滞を経て、日本の労働市場に変化が起きています。2024年には90%以上の企業が基本給を引き上げました。大企業がその先頭を走る一方で、中小企業にも波及効果が見られています。さらに注目すべきは、新卒社員が大幅な給与アップの恩恵を受けていることです。

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🔍 賃金とデフレ

Watanabe（2025）は、日本の経済停滞を理解する上で重要な視点を提供しています。彼は、賃金と物価の双方が年々変わらない「賃金・物価スパイラル」が慢性的なデフレーションを引き起こしたと主張しています。

1990年から2020年にかけての国際比較でも、こうした停滞が明白に見て取れます。購買力平価で見た日本の実質賃金はわずか4%増の約39,000ドルにとどまりました。一方で、アメリカは約50%増の約69,000ドル、OECD平均は約30%増の49,000ドル近くに達しています。

🛠️ なぜ賃金は停滞したのか？

賃金停滞の根本原因は、1990年代初頭の資産バブル崩壊後、多くの企業が基本給引き上げを断念したことに遡ります。その意識が決定的となったのが2002年の「トヨタ・ショック」です。トヨタは国際競争力を維持するため、ゼロベースの賃上げ方針を初めて導入し、これが他の企業にも波及しました。

さらに悪化させたのが、2003年から2010年代初頭にかけて日本労働組合総連合会（連合）が統一したベースアップ要求を出さなかったことです。労働側からの圧力が欠如したことで、賃金の凍結状態が事実上容認されたままとなりました。

🌅 Post-Pandemic の賃金回復

COVID-19パンデミック以降、日本は経済停滞からの脱却を図りつつあります。消費の回復とインフレ圧力の高まりが背景にあり、大企業も中小企業も従業員の基本給引き上げに踏み切りました。

2024年には、この流れが本格化し、90%以上の企業が基本給の引き上げに合意しました。トヨタやパナソニックといった大手企業が平均5.5%の賃上げを実施し、さらに中小企業でも労働組合の交渉により約5.09%の増加が実現しています。

🎓 新卒の初任給が上昇

労働市場への新卒にとって、これは特に注目すべき変化です。2024年、新卒採用者の初任給を大幅に引き上げる企業が相次いでおり、若手にとって明るい兆しとなっています：

これらの数字は、長年新卒の給与がほぼ横ばいであった過去とは一線を画しています。

🏭 どの業界が賃上げをけん引しているのか？

業界別に見ると、製造業、建設業、サービス業などが賃上げを牽引しています。この賃金上昇の波は一時的なものである可能性もありますが、AIの進化や半導体分野での技術的優位性と相まって、日本の経済全体に変革をもたらす可能性が期待されます。

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References:

The Japan Times. (2023). “Japanese banking giants bump up graduate starting salaries in talent war”. https://www.japantimes.co.jp/news/2023/03/01/business/banks-graduate-salaries/

Yomiuri Shimbun. (2024). “Japan Companies Raise Starting Salaries for New Graduates; Retention of Young Employees a Concern”. https://japannews.yomiuri.co.jp/business/companies/20240326-176737/

The Japan Institute for Labor Policy and Training (JILPT). “60 Years of “Spring Offensives”. https://www.jil.go.jp/english/researcheye/bn/RE008.html

Reuters. (2024). “Japan’s economy rebounds strongly on consumption boost, backs case for more rate hikes”. https://www.reuters.com/markets/asia/japan-q2-gdp-expands-annualised-31-april-june-2024-08-14/

Asahi Shimbun. (2024). “Survey: Wage increase rate hits the highest since 1999”. https://www.asahi.com/ajw/articles/15166586

T. Watanabe (2025). “Japan’s Chronic Deflation: Causes and Consequences”. CJEB Working Papers No. 393, Columbia University

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