岡山大学非常勤講師の朴珍希先生が、2012年11月デジタルソウル韓国芸術文化大学(韓国・ソウル市主催)の「国内及び海外韓国語教育者体験手記」に応募し、「最優秀賞」を受賞しました。
(授賞式の様子) | (山陽新聞2012年12月25日掲載) |
■朴珍希先生の2012年度の業績は以下の6本です。
①論文:「『するには』に関する一考察」『岡山大学大学院社会文化科学研究科紀要』第 33号 2012.5
②韓国語テキスト:『みんなで話そう!韓国語Ⅰ』大学教育出版 2012.5
③発表:「日本における外国語としての韓国語教育-岡山県内の大学・高等学校の現状と 展望-(1990~2012)」「第56回朝鮮語教育研究会 第二言語習得論分科会」2012.12.22 発表
④論文:「ロンドンオリンピックの日韓新聞記事における一考察」『オリンピックの言語 を読む』(韓国学術情報)2013.2 共著(論文の要旨は以下参照ください。)
⑤翻訳:『オリンピックの言語を読む』(韓国学術情報)2013.2
⑥論文:「日本における外国語としての韓国語教育-岡山県内の大学・高等学校の現状と 展望-(1990年代~2012年)」(朝鮮語教育研究会『朝鮮語教育-理論と実践-』第8 号)2013.3.31
上記、④の論文要旨
「ロンドンオリンピックの日韓新聞記事における一考察」要旨
朴珍希(共著:山根智恵)
本稿は、談話分析を通して、オリンピックというナショナリズムが現れやすい祭典における言語使用と、その背後に現れる日韓の社会的・文化的背景を明らかにするという目的の下に、日韓の新聞におけるロンドン大会の記事を収集し、分析した。分析の観点は、①昨今のオリンピックは、国家間競争の観を帯びてきているが、見出しにはその国家意識を表出する語彙が多用されるのか。国家と対照的な家族・職場といった親密な共同体に関する語彙の使用状況にはどのような傾向が見られるのか、②国技はナショナリズムの高揚に一役買うが、日韓の国技である柔道・テコンドーの記事にはどのような傾向が見られるのか、③日韓の新聞記事に双方の国はどのように報じられているのか、④東北大震災とオリンピックはどのように関わっているのか、の4点である。考察から得られた知見は以下の3点である。
1. 北京大会までとロンドン大会の相違は、韓国に大きく見られた。国名の出現頻度が半減し、同胞意識を強く表出する「ウリ」の出現数も減少したという点である。さらに国技であるテコンドーの惨敗や柔道における日本に有利な判定についても目立って批判的な記事が見られず、韓国から日本に国籍変更したアーチェリー選手の活躍や、日本男子サッカーの力についても肯定的な記事が多かった。これは、金メダル数において世界5位という、期待に違わぬ成績が保てたことへの自信と余裕の表れであると推察される。
2. 日本では、相変わらず「日本」を見出しとして掲げ、金メダルゼロに終わった男子 柔道については、選手のインタビュー記事のみならず、紙面全体に悲壮感が溢れていた。依然として国家にこだわっている日本の姿が浮かび上がる結果となった。
3. 勝者の記事が圧倒的に多く、トップ至上主義の韓国と、敗者にも紙面を割く、敗者にも優しい日本という北京大会までの分析傾向は、今大会も変化なかった。これは、日本社会の甘さにも通じるところだが、一方この甘さは勝利至上主義を超えたスポーツの本質を考えさせてもくれる。東日本大震災の被災地の人たちを勇気づけようと立ち上がるアスリートの姿は、心を砕かれた人々の支えとして、記事の随所に見ることができる。